一触惚れ

先日、「感触を伝えることのできる義手」の研究について紹介するテレビ番組を観ました。義手と足の親指がセンサーで繋がっており、足の親指を上下させることで義手を開閉でき、義手で物を持った感触が足の親指の裏に伝わる、というものでした。

これによって、今までの義手ではできなかった微妙な力加減を調節することができるそうです。例えば人と握手する際にも、そっと優しく握ることも、力強く握ることもできます。相手の手は細い、柔らかいなどと感じることができるといいます。

番組では、生まれつき右腕の手首から先がない女性が、この研究に協力していました。感触が伝わってくるのを体験して、女性は「今までの義手で特別不自由を感じてはいなかったけれど、この義手を使ってまだまだ可能性が広がる気がした」と、目をキラキラさせておっしゃっていました。


感触が伝わる義手(写真 FUTURUSより)

この番組を観て私は、andu ametのバッグに初めて触れたときのことを、ふと思い出しました。あらかじめ画像でバッグを見たことはあり、肌触りの良い革だということは聞いていましたが、初めて実物と対面して触れたあの「一目惚れ」ならぬ「一触惚れ」の瞬間は、今でも忘れられません。

人が五感で得る情報の割合は、視覚が87%と最も多く、それに比べて触覚は3%と言われているそうです。普段の生活の中でも、触覚はそれほど重要視されていないかもしれません。けれど、人のこころには重要な役割を果たしているのではないかと思うことがあります。

スヌーピーでおなじみの漫画「PEANUTS」でも、ライナスくんという男の子がお気に入りの毛布を常に持ち歩いています。私も、ライナスくんほどの執着心ではないものの、手放せないタオルやぬいぐるみがあります。それらは古いもので、見た目はボロボロであったり色あせていたりしますが、触れているだけでなんとなく心が落ち着くような気がするのです。

私たちは物を選ぶときに、色や形など、どうしても「視覚」で得た情報を基準にしがちです。でも、今よりもう少しだけ「触覚」にも意識を傾けてみたら…これまでとは全く違う世界に出会えるかもしれません。

(クオリティコントロール担当スタッフ ジョージ)