皮から革へ ー日本の皮なめし工場見学記—

下町の風情が色濃く残る墨田区。
荒川と隅田川を擁し、その河川敷一帯は日本を代表する皮革産地となっている。そんな墨田区の皮なめし工場のひとつ、山口産業さんにお邪魔させていただいた。工場のたたずまいはこんな感じ。パッと見はエチオピアの革なめし工場とよく似ている。



未だにドラムなどの機械に木製を使っているの、外気との温度差による影響を最小限に留めるためだそう。水を大量に使うので、足場が湿っているのも、エチオピアの工場と同じ。

まずは皮を鞣(なめ)す過程について説明を受ける。



原料皮はすべて食肉文化の副産物なので、食肉加工所から仕入れる。脱毛、石灰付け、酵解、浸酸という準備工程を行うが、これらの工程は外注で行っているとのこと。

ちなみにエチオピアでは大量の皮革を産出しておりながら、この準備段階である”原皮”の輸出に依存しており、付加価値が低く、産業の発展に貢献できていない。私がブランドを立ち上げ、現地生産を行いたい大きな理由がここにある。

この準備段階を経て、前なめし、一枚一枚裏裏けずりするシェービング、そして本なめしを行う。



続いて染色。色によっては一昼夜つけ込む必要があるとのこと。同じ染料を使っても、植物タンニンで鞣したものとクロムで鞣したもの、技法によって全く異なる発色を実際に見せていただいた。

それから、木組みの専用干場で一枚ずつ棒にかけて自然乾燥させる吊り乾燥とそれをさらにフラットにして乾燥させるネット張り乾燥。

仕上げにスプレー剤をかけたり、アイロンをかけたり柔らかさを出すバイブレーションという作業を行ってやっと完成!



一枚の皮がここまでくるのに約半月かかるのだそう。
最後に、完成した革を見比べながら革についてお話を伺った。やはり、日本の技術はすごいなあ。うむむむ深い。おもしろい。ちなみに私が好きなとあるブランドのバッグもこちらの革で作られているのだそうだ。

この山口産業さん、レザークラフトが好きな個人の方から服飾専門学校の生徒さんまで年間なんと1000人近くの方々に向けてこうして見学会を実施されているのだそう。あのマザーハウスのスタッフさん達もきたことがあるらしい。他にも地場産業振興のための活動を行っていらしたりと、お話を伺いながら、大変感銘を受けた。

日本の工場について今までも、本で読んだり、人から聞いたりはしていたが、やはり百聞は一見に如かず。エチオピアの工場とは色々異なる点も多く、とても勉強となる、充実した一日だった。

山口産業の皆様、本当にありがとうございました!!



帰り道に見えた建設中のスカイツリー。
遠くて近いつかめない〜 虹と一緒にパチリ☆