長い旅を経てつながるもの 〜 人間分子の関係、あみ目の法則

こんにちは。プロボノのかなです。

私は先日、話題の本「君たちはどう生きるか」を読みました。主人公は中学二年生のコペルくん。物語は、コペルくんと彼の叔父さんがやりとりするノートに基づきながら進んでいきます。コペルくんはそのノートに、様々な悩みや発見を書き記します。その中で、私の頭の中に強く残る発見がひとつありました。それはコペルくんが「人間分子の関係、あみ目の法則」と名づけたものです。人間分子はみんな、見たことも会ったこともない大勢の人と、知らないうちにあみのようにつながっている、という発見です。

s

コペルくんは、赤んぼうのときに毎日飲んでいた“粉ミルク”のことを考えていたとき、この発見をしました。それは、オーストラリアから輸入したラクトーゲンという粉ミルクでした。オーストラリアの牛から自分の口に粉ミルクが入るまで、とてもとても長いリレーをしてきて、牛を育てる人、粉ミルクを作る人、それを運ぶ人、倉庫の人、広告をする人、それを売る薬屋の人など、たくさんの人が自分につながっているんだという気づきでした。

これを読んで私は、andu ametの製品のことを考えました。これまで、エチオピアの職人さんたちが関わっていることは想像していましたが、さらにその前、エチオピアの大地で育つ羊やそれを育てたり食べたりする人のこと、革はもちろんミシンや糸ができるまで、それらが工房に運ばれるまでのこと、また、製品が完成した後のこと、運ぶ車のドライバー、空港の職員、日本に来てから売るまでに関わるスタッフ、広告写真のモデルさん、カメラマンなど、コペルくんが言うようにまるできりがないほどたくさんの人間が出てきました。

何年もプロボノとしてandu ametに関わってきたにも関わらず、これまでそのことに気がつかなかった自分を恥ずかしく思うと同時に、嬉しくもありました。andu ametの製品を通じて想像しきれないほどたくさんの人と、エチオピアや日本、そしておそらくそれ以外のたくさんの国とも、知らず知らずのうちにつながることができたからです。

そこからさらに、以前メキシコの旅先から日本にいる友人宛に絵ハガキを送ったときのことを思い出しました。それは送ってから約一ヶ月経って、友人の元に届きました。私が日本に帰国してからしばらく経っていたので、やっと届いたか、遅かったなと少しがっかりした気持ちでいました。
けれど絵ハガキを受け取った友人は、とても素敵な言葉を残してくれました。私がメキシコで絵ハガキを出してから自分の手に渡るまで、この絵ハガキはどのような旅をしてきたのだろう、約一ヶ月の間どのような人の手から手に渡り、どのような景色を見てきたのだろう、それを想像するだけでもワクワクする、と。

私たちの身の回りにあるもの全てが様々な旅をしていて、私たちと一緒になってからもその旅は続き、私たちは顔も知らないたくさんの人とつながっている。そのことに改めて気づいてから、バッグひとつ、お財布ひとつ手にするたびに、ワクワクするようになりました。

皆様もよかったら、身の回りのものの様々な旅や、それを通じて網目のようにつながっている人たちのことを想像してみて下さい。いつか皆様の旅についても教えていただくことができたら、とても嬉しいです。