裸の出会い系ナイト「エバンガディ」潜入レポ

エチオピア南部のオモ川流域には、複数の少数民族たちがひしめきあいながら今もなお、大地とともに生活をしている。

ハマル民族もそのひとつ。
惜しげもなく露出した胸や腕や脚を土とバターで赤く染め、ビーズやブロンズのジュエリーをじゃらじゃら身にまとっているのが特徴だ。



現地の友人の友人が、そのハマル民族の酋長だった縁で、以前彼らの家にホームステイし、ついでに満月の夜にだけ開かれる男女出会いの儀式「エバンガディ」に参加させてもらったことがある。

電灯も目印になりそうな建物も何もない林の中で、どうやって目的地を計っているのか、確固たる足取りの酋長に従い30分ほど真っ暗な中をもくもくと歩いてそこへたどり着くと、すでに恋人募集中の男女約30名が集まっていた。

まずは酋長が延々と歌うように話はじめる。
民族独自の言葉なので私にはわからなかったが、同行していた現地の友人がいうには俺は牛を90頭持っている、羊は120匹持っている・・・と持ち物自慢をして、自分と結婚するとどんなにすばらしい生活が送れるかを熱烈にアピールしているらしい。

こんなにもライフスタイルの異なる世界でさえ、男選びのカギが資産状況という点だけは共通であることにすっかり感心していると、今度は酋長の弟がやはり同じように持ち物自慢をはじめた。牛2頭、ヤギ30匹、羊15匹と酋長に比べると数はガクンと落ちるが、それでもやはりセレブファミリー、女の子たちはうっとりと耳を傾けている。続いて持っているのは羊10匹という中堅クラス、たった2、3匹のみで参加する若さと情熱で勝負派など、参加している男性陣のアピールタイムが延々と続く。

全員の資産状況の申告が終わるとおもむろに男女分かれ、向かい合わせになってぴょんぴょん飛び跳ねはじめた。いわゆる花いちもんめ状態だ。
約30名の体格のよい裸の男女が真っ暗闇の中ぴょんぴょん飛び跳ねている光景は、なんとも言いがたい不思議な光景である。
やがて、男性陣のうち一人がぴょんぴょん跳ねながら女性の前に来た。女の子もはねながら一緒に踊る。どうやら踊りで交際OKかゴメンナサイかを表しているみたいだ。
交際OKの踊りをもらった男性は嬉しそうにさらにぴょんぴょん飛び跳ねるのだが、しばらくすると今度は別の女性と踊りたしたりして、うーむ自由だ…。
さっきまで威厳ある風だった酋長も、若くてぴちぴちした女の子の前でうれしそうにぴょんぴょんしている。
酋長…さっきまで家で奥さんや子供たちと一緒に仲良くごはん食べてたのに…。

などと思って見ているとなんと私のところにも男性がきた!
おお彼は酋長の弟ではないか!せっかくなので見よう見まねで私も一緒に右に跳ねたり左に跳ねたり。ハマルの人々には大いに受けたがふりかえってエチオピア人の友人を見てみると頭をかかえている。
翌朝きいたところによれば、私が適当に相手にあわせて踊ったふりつけはなんと交際OKのサインだったらしい。
そのあとも入れ替わり立ち代わりそれぞれがそれぞれを誘い、踊りは延々と続けられた。

しかし、普段裸で生活しているだけあってか展開が異様に早い。
夜が深まるにつれ踊りも色んな意味でヒートアップしてきて、交際OKから危うく受胎OKにさせられそうに。まだまだ裸族として生きる覚悟ができていなかった私は、盛り上がっている会場をこっそりと後にしたのだった。