日本から、バッグ作りのプロフェッショナルがやってきた! — エチオピア工房 技術指導レポート —

こんにちは、エチオピアより、andu ametデザイナーの鮫島です。

「もっともっといいものをつくりたい」そんな私たちの想いに応えるように、先日エチオピアの工房に心強い助っ人がやってきてくれました。

お迎えしたのは、「株式会社エヌ・ケー」で長年ハンドバッグ製造に携わる、中村さん。andu ametも取得している「B Corp(ビーコープ)」という国際認証を取得していらっしゃいます。
日本のものづくりの現場で培った豊富な経験をもとに、品質向上のための技術や仕組みについて、惜しみなく共有してくださいました。


経験に依存していた技術を、誰でもできる技術へ

これまで私たちの工房では、職人たちが経験と勘に頼りながら、試行錯誤で技術を積み上げてきました。
でもそれでは、誰が作っても安定した品質を出すのは難しい。

今回の技術指導では、まず縫製の基礎やミシンの調整から見直しました。
針の刺さる角度、押さえ金の強さ、ステッチの幅、ファスナーの付け方など、ほんの少しの調整が仕上がりにどれだけ影響するか…。

実は昨年、私たちはJUKIの工業用ミシンを輸入し、入れ替えたところでした。
エチオピアで手に入るミシンの方が修理や部品調達がしやすくてサステナブルだと思っていたからなのですが、品質面ではどうしても限界がありました。
JUKIミシンの導入以来、縫い目の美しさも強度も安定感も格段に向上していたのですが、今回はさらに、専用のアタッチメントや補助ツールを導入し、より安定した仕上がりが実現できるようになりました。

最初は新しいやり方に戸惑っていた職人たちも、日を追うごとに
「たしかにこれなら失敗しにくい」「前よりずっと早くてきれいにできた」
と、表情がどんどん誇らしくなっていきました。

読み書きできなくても、伝わる仕組み

工房には、読み書きが苦手なスタッフもいます。マニュアルやその他の規則は現地語で作っていましたが、文字だけに頼った伝達方法では、どうしても伝わらないこともある。
それも、品質が安定しない原因のひとつでした。

そこで今回は、

  • 型紙をもっと誰でも理解できるように、一から作り直し

  • 検品は写真や記号を多用し、“見ればわかる”やりかたに

  • 組立をサポートする新しいジグ(補助ツール)も導入

視覚で伝わる工夫を重ねたことで、作業スピードも仕上がりの安定感も大きく変わりました。
「自分にもできた」「ミスが減った」
そんな声が自然と現場から上がるようになったのが、何よりの成果です。

垣間みえた本音

技術指導の最終日、中村さんへの感謝を込めて、工房の皆でささやかなランチパーティを開きました。その場で、工場長がこんな話をしてくれました。

「エチオピアでは、学ぶ機会も情報も圧倒的に少ない。だから、こうして必要な技術を教えてもらえるのは本当にありがたいんです。
私たちがほしいのは、お金じゃありません。知識と技術があれば、自分たちの力で、もっと良いものがつくれる。明日からこれまで以上に高品質な製品を作れるようになるのがなによりも嬉しいし誇らしい。」

その言葉に、まわりの職人たちも深くうなずいていました。
援助に頼りたくないという気持ちは、実は彼ら自身がいちばん強く持っている。
学びさえあれば、自分たちの手で未来を切り拓ける——そんな確信が、静かに、でも力強く伝わってきました。

中村さんからは、
「途中で“あれ、何か違う”と気づいたら、やり直す勇気を持ってください。隠したり、流したりするのではなく、立ち止まって見直すこと。本当に良いものをつくることが、最終的には自分のためにも、お客様のためにもなるんです。」
という言葉が。

品質とは、ただ手先の器用さだけでなく、正直さと責任感から生まれるもの。今回の指導を通じて、そういう「ものづくりの姿勢」少しずつ職人たちの中に根付いていくように願っています。


続けることが、未来につながる

ところで日本からの技術指導は、今回限りの単発の取り組みではありません。andu ametでは、不定期ではありますが、日本から専門家を現地に招き、継続的な指導を行っています。正直なところ、電気や水もインターネットも安定しないエチオピアに長く滞在してくださる方を見つけるのは簡単ではないのですが、地道に続けていくことに意味があると私たちは考えています。

フェアトレードとは「適正な賃金を払うこと」だけではありません。働く人に学ぶ機会や成長のチャンスを”長期的に”提供し、その結果として本当にいいものをつくってもらえるようになること。そのものづくりを、お客様が正当に評価し、また次へ、そしてその次へとつなげてくださること。そんな”永続的な循環”の中でこそ、ブランドも、工房も、未来へと歩みを続けていけるのだと思います。

これからも、心を込めて。
時代を超えて皆様から愛されるバッグを、エチオピアからお届けしていきます。